Oxonian’s

韓国の大学で働いてます。EBSラジオ『たのしい日本語』も担当中です。

20年越しの読書

確か、20年くらい前のことだったと思う。
日曜の朝はアニメを見て、その後に「おそく起きた朝は...」を見ていた。
その番組の中で、磯野貴理子さんが、ある本を絶賛していたのだ。

夢枕獏神々の山嶺

一字一句は覚えていないけれど、
「一行読みだすと、もうその小説の世界に入り込んでる...」
のようなことを言っていた。
それを受けて、松居直美さんか森尾由美さんが聞き返し、
「あ、一行は大げさだけれど、でもすぐに世界に入り込める」
みたいなことを言っていた。

当時、僕は確か中学生だったろうか。
そのような話を聞いて、その本に漠然と興味を持った。
以来、この本のことは忘れていなかったが、なんとなく読まずにいた。

しかし、何年か前に映画『クライマーズ・ハイ』を観たとき、
登山に関する作品って面白いんだな〜と感じた。
それで、やっぱり『神々の山嶺』を読みたいと思ったのだけれど、
このような長編小説を読む程のまとまった時間がなくて、読めずにいた。

でも、去年、日本で『神々の山嶺』が映画化されたことを知った。
それならば、まずは小説を先に読みたいと思った。
しかも、読むなら、寒い間に読みたい。
ちょうど、先週に大きな仕事が一段落したし、今月は締め切りはない。
[追記 (15/March/2017):締め切り一つ忘れてました...]

このようなタイミングはなかなかないと考え、昨日の夜に読み始めた。
一行で小説の世界に飛び立つことはなかったように思うが、
数ページを読み終えるうちに、そうなっていたと思う。
そして、それからほどなくして、
「あ、貴理子さんが言っていたこと、本当だ」と実感した。

仕事上、日々、論文や本を読まなければならない身としては、
長編小説を時間をかけて読むということは、とても贅沢なこと。
でも、今が読むべき時だと思う。
ようやく、20年越しの読書ができるのだ。

全くお会いしたことのない方にお礼を言うのも変ですが、
磯野貴理子さん、ありがとうございます :)